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10. 01, 1998

デート

 ずいぶん前にラジオで聴いた話である。確かリスナーからの投稿だったと思う。
 その君は学園の中では一二を争う程の美人で、みんなの憧れの的でした。
 自分もやはり、当然に彼女へ想いを寄せる一人でした。
 しかし、自分はそれほど魅力のある男でもない、もし心の内を彼女に打ち明けたとして、嫌われたらどうしよう。
 そんな悩みを押さえきれず、ある日、意を決して彼女にデートを申し込むと、夢かと思うほど簡単に快諾を得ました。
 天にも昇るような気持ちです。しかし、その次の瞬間ちょっと不安になりました。何処へ行こう。余り品のない場所では嫌われてしまう。そうだ、古寺巡りはどうだろう。ちょっと渋いかな。それでもと、彼女に予定を伝えると素直に喜んでくれました。
 そしてデート同日、やたらと弁舌になった私は彼女に寺のいわれなどを説明していました。今日、この日のために、頭にたたき込んで来た知識を惜しげもなくしゃべりまくったのです。彼女の感心する顔。やっぱり可愛い。良かった。
 ここまでは......
 「あっ」彼女が立ち止まり、
 「かわいそう.....」
 そう言うと、彼女は水子地蔵の前でしゃがみ込み、身動きせぬまま数分間手を合わせ続けました。
 私は最初「見ず知らずの水子地蔵に手を合わせる。なんて優しい人なんだ。」と彼女を愛おしく思いました。しかし、一心に手を合わせ続ける彼女の後ろ姿に、何か別ものを感じました。
身内の墓に手を合わせるような......
 そして、私は二度と彼女をデートには誘いませんでした。

# 取り越し苦労でしょう。きっと、とっても優しい彼女だったんだと思いたいです。